左から尾中、菊永さん、柳さん、濱崎園長、宮田

日本に数少ない きこえない子どもの入所施設「金町学園」に迫る危機?!

金町学園とは?

金町学園は、家庭の事情やよりよい文化的生活環境を求める聴覚障害児を専門にした入所施設です。聾学校との違いは、金町学園は聴覚障害児が職員とともに生活をする場所であり特に授業等はなく、生徒の多くは付近の聾学校に通っているのです。金町学園は、この日本の中でも稀有な存在の施設であり、これまで80年以上もの歴史があります。

聴覚に障害のある児童にとって、ものを考える・発信するための「ことばの獲得」は当然重要でありながらも、きこえる児童に比べ「ことば」への接触機会が少ないことから周囲の大人(一般的には親)の「ことばの獲得」の環境づくりが必要不可欠になります。

この金町学園は、聴覚障害児が文化的に生きるためのいわばセーフティネットのような役割を果たしており、さらには、入所している子どもたちが文化的・社会的人物に育ち、夢が実現することをバックアップしようという場所なのです。

・・・と元から知っているような口を叩いておりますが、恥ずかしながら、このような施設があるということを知ったのも、あるニュースがきっかけでした。

その金町学園が、まもなく閉鎖されるというのです。

また、公的資金投入についても目処は立っていないとの事前情報だったので頭の片隅には、お会いする学園の職員の方々は、さぞかし落胆されていらっしゃるだろう。・・・とそう思っていたのです。

私が存続してほしいと思う理由

金町学園を訪れる、私としては金町学園は存続して欲しいと、そう思っています。聴覚障害者の両親を持つ私自身、これまで数々の親子や働く聴覚障害者と話してきた経験上、感じている存続してほしい理由は大きく2つあります。

理由①:言語の違い、伝え方の違い、対応の違い

「障害者」と一言に言っても、それぞれの障害特性を考えると障害をなくすための方法は変わってきます。「障害の種類」と「対応方法」というのは実際にはかなりの細分化があると思います。その中のひとつとして、聴覚障害というのは「言語が違う」あるいは「伝え方」が違うのです。例を用いると、さまざまな障害者を集めて「もうすぐ津波が来るので高いところに逃げてください!」と彼らに叫んでも聴覚障害者だけは、その意味がつかみにくいのです。「視覚化」という違う対応が必要なのです。そしてその、「伝え方の違い」というのは聴覚障害者の唯一にして最大の壁なのです。

特に幼少期に「伝え方の違い」に対応がなされない場合には、ことばの発達が遅れ、それは理解する力・考える力、他者と会話する力と影響が出てきます。成長につれ結果的には「経験の少なさ」となって、聴覚障害とはまた別に二重のハンディキャップとなるのです。

金町学園には同じ境遇を持った同世代の仲間、職員の方々、掲示物や視聴するテレビなどなど、生活でふれる多くのものに、手話や文字化といった視覚化の対応がなされています。この生活環境における、「ことば」との接点の保障は、金町学園の大きな価値なのです。

デフリンピックに関する掲示物:施設内には目で見て知れる情報が散りばめられています。この掲示物は個人的に知りたかったことで、模造紙一枚の情報量と整理の仕方に感動しました。
デフリンピックに関する掲示物:施設内には目で見て知れる情報が散りばめられています。この掲示物は個人的に知りたかったことで、模造紙一枚の情報量と整理の仕方に感動しました。

理由②:社会のゆりかごとしての金町学園

聴覚障害がある・ないを抜きにして、親が我が子を虐待するという痛ましいケースは、しばしば耳にします。当然、その矛先が聴覚障害のある児童にも向けられることはあるのです。(※金町学園の入所児童が必ずしもそうであるわけではありません)
そうなった場合、保護先となる一般的な児童養護施設では子どもと会話ができない先項の対応がしきれない可能性が高いのです。受け入れ対応をしようにもノウハウを定着したり、それに適した人材を登用するのには高いハードルが存在します。また、聴覚障害児で集まった場合に比べ「意見の交換」や「大人との(深い)会話」の機会は減ってしまうでしょう。そこで金町学園へ。という話にはなると思うのですが閉鎖となる。

ここに関しては、この記事を書く筆を進めながらも「難しい!」と思ってしまいます。「きこえない子ども同士のコミュニケーションを大事にする」ことと「子ども同士の線引きをなくす」というところは、いくつかの考え方が存在しますし、どちらも正しいのですが、少なくとも金町学園では子どもたちが「精神的にも」孤立することはないと感じました。

楽しいことも悲しいことも話し合える、友達や親代わりの大人がいる。彼らに生きる希望を与える、金町学園のようなアプローチをしている場所がなくなることはとても残念なことだと、個人的には思っているのです。

閉鎖をむかえる金町学園の「いま」

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大阪を中心に活動する私たちですが、閉鎖ニュースを聞きつけて好奇心MAX状態となり行ってまいりました。行って、最初に驚いたのは、「かねまち」ではなく「かなまち」でした。(そんなことはおいといて)

金町駅を降りてバスに乗り、金町学園が近づいてくると、「施設の人たちはどんな気持ちだろう?」ということばかり頭の中で考えていました。様々な事情を持つ子どもたちの面倒を見ている職員の方々。子どもたちも、ごく当たり前の環境として、そこで生活をしているはずです。「閉鎖」ということをどう受け止めているのだろう…と妄想が膨らみました。

左から尾中、菊永さん、柳さん、濱崎施設長、宮田
左から尾中、菊永さん、柳さん、濱崎施設長、宮田

まず、私たちを出迎えてくださったのは、濱崎施設長です。明るい雰囲気をお持ちの方で、小振りな手話と声で歓迎してくださいました。あとから、職員の柳さん菊永さんもお仕事の合間を縫って面談の部屋に来てくださいました。

お話をするにつれ、「閉鎖」をどう考えているか、濱崎施設長はそれを(もちろん含みのある言葉ですが)「チャンス」だと感じておられました。「ピンチはチャンス」という、いい言葉がありますが、まさにそれでした。「閉鎖」のニュースをきっかけに、多くの人が金町学園や聴覚障害について知り・考えることを期待している…!と。自分たちが、まさにその通りだったので、たいへん納得がいった次第でした。

いま、金町学園は存続のために職員が団結し、歩み始めているのです。その一つの証、取り組みがクラウドファンディングの大きな成功です。

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クラウドファンディングサービス「READY FOR…?」の金町学園のプロジェクトページ
https://readyfor.jp/projects/kanamachigakuen_ubdobe

なんと、安倍昭恵夫人まで巻き込んで、首相官邸で踊るという…!濱崎施設長は大変ポジティブなパワーを持っていらっしゃる印象があったのですが、こういった強い行動に現れていますね。そうして、金町学園は存続に向けて世界に訴えかけていくのだそうです。力強い!きっと、子どもたちにとってもすごくいい経験になると思います。本当にピンチはチャンスですね。

職員の柳さん菊永さんと話して

濱崎施設長がお仕事に戻られたあとは、職員の柳さん菊永さんとゆっくりお話をして施設内をご案内いただきました。お話をしていて感じたことは、この「聴覚障害×教育」の問題は(考えてみれば当然なのですが)東京でも大阪でも他の地域の誰と話していても「同じ」ということです。でも、今の時代にあって、これだけ悩んでいる人がいて解決策の選択肢がこれほどまでにないのは新鮮味さえ覚えます。健常者である私は、何かに詰まってもインターネットで検索すれば溢れんばかりの選択肢がありますから…。

誰が、今の聴覚障害・難聴児たちの未来=社会進出を共に描いてあげて、必要なものを用意してあげることができるか。聴覚障害・難聴児はやはりマイノリティではあります。ビジネスになりにくいため、変革のスピードが遅い部分はあります。だからこその「社会の存在」と思うところもあります。そこには、リーダーが必要です。

Silent Voiceはこの3年以内に本格的に教育事業も展開します。当事者のリーダーを立てながら、まずは聴覚障害・難聴児が真っ直ぐな夢を描ける状態を作ろうと思います。

そのために、想いを改めた訪問になりました。

金町学園の皆様、親身に接してくださり本当にありがとうございました。
聴覚障害・難聴児のために価値のある存続を私たちも心から願っています。

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