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小学生との声を使わないコミュニケーション体験での発見!

声を使わないコミュニケーション体験を
小学校の約500名へ

私たちの事業である「コミュニケーション・アート“DIVE”」は日頃、企業や団体つまりは大人の方々に参加していただいています。この度、初めて大阪府の高槻市立寿栄小学校に「こどもDIVE」ということで、全校生徒と先生とPTAの方々の約500名に言葉を使わないコミュニケーション体験を届けてきました。体を動かす場面が多かったのですが、子どもたちは元気いっぱい積極的で、スタッフも関われたことにただ感動しました。

ろう者式の拍手。みんな元気いっぱいジャンプしながらやってくれました。
ろう者式の拍手。みんな元気いっぱいジャンプしながらやってくれました。

高槻市立寿栄小学校の教え

私たちの訪問した寿栄小学校は、「コミュニケーション」や「対話」に力を入れている学校でした。それは、ひとりひとりの個性を尊重することに繋がっています。写真は6年生の教室にあった「話し合いのルール」という掲示物です。私たちの授業のときもそうでしたが、寿栄小学校の生徒の皆さんは本当に何を話しかけても反応がよく、質問をすればほとんどの生徒が挙手して気おくれなく発言していました。この「話し方のルール」が教育現場に活きているんだなと感じました。更に先生に聞くと、地域との繋がりが豊かで、多くの子どもたちが親以外の大人ともコミュニケーションをとっているということでした。何より良いなと感じたのは、子どもたちが自分の関心のあることに自主的に積極的に取り組もうとしている姿勢でした。自分自身でおもしろいことに触れている感覚があれば、たくさんの知識や経験を身につけることができるのだろうなと、多くの生徒を見てそう思いました。

寿栄小学校の教室内の掲示物
寿栄小学校の教室内の掲示物

聴覚障害者(DEAF)が伝える、
コミュニケーションに大切なこと

きこえなくて、困ること、良いこと

「DEAFと話したことある人いる〜〜?」という問いには、ほぼ手が上がりませんでした。子どもたちにとっては、未知である「音のない世界」。まずは、子どもたちと一緒に耳をふさいで、小さな声でお話をしてみました。その後、「“きこえない”って何が困るんだろう?」という問いかけに、子どもたちは思い思い答えてくれました。「目覚まし時計の音がきこえない」「犬に吠えられても気づかない」、きこえなくて困ることがたくさん挙がってきました。次に、「“きこえない”って何かいいことあるかな?」と、子どもたちに聞いてみました。意外な質問に子どもたちも驚いていましたが、「勉強のときに集中できる」「夜ぐっすり眠れる」といった答えが挙がりました。

「きこえないからこそ、伸びた力」

そして、Silent VoiceのDEAFのスタッフの体験から、「きこえないからこそ、伸びた力」のお話をしました。目の見えない視覚障害者が「モノからの孤独」と言われる一方で、音のきこえないDEAFは「人からの孤独」とよく表現されます。例えばグループで、ひとつのテーブルを囲んでお話をしていても、DEAFにとっては目の前の友人が何を言っているのか「わからない」ということは日常茶飯事です。でも、だからこそ「わからない」という壁を乗り越える脚力が身につけられることがあるのです。それは、「(相手を)見る力」や「粘り強く向き合うこと」です。見ることには、相手の感情の変化を知るためのヒントがたくさんあります。そして、なにより「相手のことをしっかり見よう、相手に伝わるように伝えよう」というコミュニケーションの姿勢は誰と話すときにも大切なことなのです。

声を使わずに伝えてみることにレッツトライ!みんな積極的に発表までしてくれました。
声を使わずに伝えてみることにレッツトライ!みんな積極的に発表までしてくれました。

声を使わずに「昨日の夕ごはん」と「一番好きな動物」を伝え合いました。多くの子どもが伝えることができ、満足げなご様子。しかし、6組に一組くらいは伝わっていません。日頃使っている言葉を使えないということは、それだけ伝えることが難しくなります。そこで、「どうすれば相手に伝わるだろう」と考えることが、まさに「相手の立場に立って考えること」に繋がっていきます。
印象的だったのは、「ねこ」を伝えようとしていた男子生徒でした。その男子生徒は竿を投げ、リールを巻くような動きをしているのです。子どもたちからは、「釣り!」「さかな!」という声が上がります。しかし、その男子生徒が表現していたのは「魚」でした。その男子生徒が最後に言ったことは、「ねこの大好物は魚だから」。会場全体から笑い声と「なるほどぉ〜」という声が上がりました。とても面白いなぁと思いました。その子にとっては「ねこ」と言って思い浮かべるのは「魚」なのです。ちなみに筆者の尾中は「猫パンチ」や「招き猫」を思い浮かべます。子どもの中には「鋭利な牙」を思い浮かべて「ねこ」を怖いと思っている子もいるでしょう。

自分と違う存在の相手

「ねこ」と文字で書いたならば誰もが同じ文字を書くでしょう。しかし、頭の中にあるイメージは、違いがあるのです。同じ地域に住み、日ごろ机を並べて学んでいる友人間でも違いがあるのです。これはよく考えれば、当たり前のことです。しかし、私たちは日常の中で「同じ」という意識を強く持ち、「きっと相手も分かっているだろう」とコミュニケーションを取っていることがどれほど多いかということに気づかされました。ただ相手に伝えているだけでは、実は自分の思うイメージがどれくらい相手に伝わっているかは分からないのです。
特に大人と比べて、多くの言葉を持たない子どもにとっては、お互いを理解するためにコミュニケーションの姿勢がとても重要になります。子どもの言いたいこと、大人の言いたいこと、その双方がしっかり伝わっているとは限らないのです。

「ねこ」の瞬間。言葉を使わないコミュニケーション体験では、伝える側も受け取る側も一生懸命になります。
「ねこ」の瞬間。言葉を使わないコミュニケーション体験では、
伝える側も受け取る側も一生懸命になれます。

学び方の変化・コミュニケーションの変化

センター試験の廃止⇒考える力を育てる教育へ

センター試験は廃止が決定しました。記述式の問題が増え、まさにいま小学校に通う子どもたちの学び方が変わろうとしています。蓄えた知識から、自分の考えをつくり、人に伝える。元はといえば、当然のことかもしれませんが、国家の教育の方針として従来の詰め込み型からは大きく方向転換が成されました。今後は、「自分で考える力」が重視されます。

ネット時代の子どもたちのコミュニケーション

受験形式の変化に先行して、子どもたちのコミュニケーションも時代とともに変わっています。現代の子どもたちはインターネットを駆使していつでも・どこにいてもメッセージのやりとりができるようになりました。その中で、恐れのひとつとしては「言葉への依存」です。LINEやメールなどによってメッセージ送受信が便利になる一方、実際に会って話すことの意味や重要性を考えなければなりません。
まずもって、文字・言葉のみのコミュニケーションには相手を理解するためのヒントが少なすぎます。自分の解釈によって読み進めてしまうことで、実際の相手の感情から離れていってしまうのです。日本には「つうかあの仲」「あうんの呼吸」と言ったような、「(相手の心情や行動を)察する文化」がありますが、画面に映る言葉に依存していては、自分と違う存在である相手のことを察したり理解するのは難しいのです。

変わるものと「変わらないもの」

どれだけ時代が変わっても、変わらない大切なものもあります。それは人の感情です。何をされれば嬉しいのか、何をされれば悲しいのか。子どもたちの中で、考える力や伝える方法が変わっても、それだけは変わらないのです。相手と自分の意見がぶつかったとき、自分の考えと異なる相手の行動に遭遇したとき、そのときに自分はどんな行動をとるのか。そこに、子どもたちのコミュニケーション能力は問われてくるわけです。大切なのは、「相手の立場に立って考えられるか」そして、「粘り強く向き合う」ということです。
その点、声を使わずに伝えるワークショップの中で子どもたちの行動には心動かされました。相手の表現していることがわからないときは、表情やジェスチャーで伝え、伝える側は一生懸命また伝えるのです。「相手は何を言おうとしているんだろう」「どうやったら伝わるんだろう」という葛藤の先に、伝わったときは抱き合うかのような生き生きとした子どもたちの姿でした。きっと、伝わったときいつもの会話の何倍も嬉しく、相手を身近に感じたことでしょう。

大切だと思うこと:コミュニケーションの「心技体」

多くの生徒たちが苦労したように、生徒たちの中に最初から表情やジェスチャーの上手な子どもたちは、ほとんどいなかったでしょう。しかし、最終的に分かり合うことができるのです。その結果をもたらした、一人ひとりの隠された能力こそが『コミュニケーションの「心技体」』です。
私たちは日頃、声を使わないコミュニケーション体験「コミュニケーション・アート“DIVE”」を企業や団体に研修として提供しています。そこで分かったことは、社会にあるコミュニケーション研修の多くが「コミュニケーションスキル」の研修であるということです。それに対して、私たちは「コミュニケーションマインド(=心)」「コミュニケーションタフネス(=体)」の必要を訴えています。それはまさに筆者・尾中が、耳のきこえない両親や友人と接する中で感じてきた、「きこえないからこそ、伸びた力」です。

「コミュニケーションマインド(=心)」とは、相手に寄り添う気持ちです。相手目線に立ち、相手の心情を踏まえたコミュニケーションをする心構えです。
次に「コミュニケーションタフネス(=体)」とは、諦めないこと。粘り強く向き合う体力です。相手を受け入れることや合意形成をするための精神的なスタミナです。

そしてそれは、DEAFと共に言葉や声を使わずに伝えあう時間を作ることができれば、体験によって発掘され成長することができるのです。そこで得たコミュニケーションの秘訣が「生きた知恵」となり、これこそが本当の「コミュニケーションスキル(=技)」なのです。
生徒たちの中に最初から表情やジェスチャーの「コミュニケーションスキル(=技)」のあった子どもは少なかったでしょう。しかし、「コミュニケーションマインド(=心)」や「コミュニケーションタフネス(=体)」を発揮すれば、結果的に分かり合うことができるのです。
私たちは、コミュニケーションの「心技体」が備わっていることが、安心感のある人間関係を作る、学業なり仕事なりの生産活動の土台だと考えています。

コミュニケーションは、誰かの世界を知るための方法

PTAや校長先生をはじめとした沢山の方々のご協力のお陰で、盛況のまま子どもたちを飽きさせないまま(?)終えることができました。
一番印象に残ったのは、自ら楽しもうとする子どもたちの姿です。自分が小学生の時に、あんなに積極的に生活していたかなぁと、本当に不思議なくらいエネルギーの平均値が高かったです。
小学生に教わったことは、「コミュニケーションは、誰かの世界を知るための方法」だということです。帰ろうとする私たちを引き止めてずっとジェスチャーや筆談、覚えたての手話で質問をしてくる子どもたちに、感動したのです。

コミュニケーションは、誰かの世界を知るための方法です。深く、誰かの世界を知るほどに、そこは尊厳に満ちており、そこに芽生える感情は「リスペクト」に他なりません。ところが、つい狭い自分だけの世界にこもってしまうと他人は競争相手や蹴落とすべき存在となってしまいます。私も過去に偏差値やお金という点で自分と人と比べ、競争しているような気分になり、本当のコミュニケーションを取り戻すまでに時間がかかりました。不思議と一つの基準にこだわっていると、ぐんぐん自分も見失ってしまうのでした。
コミュニケーションによって誰かの世界の扉を開くということは、自分自身の可能性をも拓いてくれます。ですから、寿栄小学校の「話し方のルール」は、宝物ですね。寿栄小学校の子どもたちの明るい未来を心から祈っております。みんな、きっとできると思いました。貴重な機会を有難うございました。

(写真:栗田一歩)

最後は世界共通の手話である「I LOVE YOU」の手話をみんなで覚えて終わりました。
最後は世界共通の手話である「I LOVE YOU」の手話をみんなで覚えて終わりました。

いただいた感想

寿栄小学校「寿栄小だより」

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寿栄小学校のウェブサイト

保護者の方々

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生徒の皆さん

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COMMUNICATION ART "DIVE”

社員間の性別・年代・個性・の違い、外国人・性的マイノリティ・障害の有無など多様化した職場に向けて、Silent Voiceが出張型で行う体験型コミュニケーションイベントです。参加者は耳栓を着用した状態で4人一組をつくり、声や言葉を使わずに非言語表現を駆使して与えられた課題をクリアしていきます。ワークショップの中では、「りんご」さえも伝えられない状況を体験します。どうすれば相手に伝わるかを考え抜き、またそれを受け取ろうとすることで、違いを乗り越えて伝わり繋がり合う喜びや可能性、人との関わり合いの方法を自ら体験的に学び、職場や家庭に活かしていきます。

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