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聴者と働くろう者・難聴者に聞いてみたコロナの影響

尾中 友哉
尾中 友哉

コロナが私たちの生活を変え、桜が咲いてもGWがやってきても、どこ吹く風
外出自粛で、これまでの人生の中でも経験したことのない春を過ごされている方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、生活の大きな柱である「働く」こと
特に「コロナの影響で会社の業績がこうなった!」という経済的な側面ではなく
DEAF(聞こえない・聞こえにくい)人々の「働く環境」に与えた影響にスポットを当てて
Silent Voiceと繋がりのある約30社30名ほどに、LINEでのやり取りで回答を頂きました。

回答は表にまとめ、多かった意見を集約しています。
ご回答を頂いた皆様、
様々な変化が押し寄せ、気疲れする今日このごろですが
そんな中ご協力頂き、本当にありがとうございました。

コロナ以前から、聴者とDEAFの壁になっていたマスク問題(詳細は前回調査のこの記事で)はどうなっているのでしょうか?

複数人の意見が重なったところを中心に「Silent Voiceが感じた働く環境の変化」についてレポートします。
 
 

会社が対面式の「朝礼」「会議」を自粛、アナログからデジタルへ急激に変化

旅行業

朝礼はすべてやらないことになった

ソフトウェア業

同じ部署の人とは、ビデオチャットをつなぎっぱなし。補聴器とパソコンの音出力を直接つないで「呼びかけ」に気づけるようにしている

人材業

もともと対面式で朝礼と夕礼をやっていたが、朝と夕に5分、ビデオ通話で顔を見ながらチャットする旨を提案し実行。顔を見ると安心します。

チャットなどは元々活用している企業も多かったが、使用割合が高まっている変化が多かった。

聴者とDEAFが共に働く上で、最大のハードルとなっていた朝礼やミーティングの会議体は数が減少。会議がチャットに置き換わるものもあり、得られる情報量はコロナ影響前に比べて増えたと答える人が多かったです。
PCを多用して働く事務職は上記のような変化が多かった一方で、生産現場のある製造職等ではコミュニケーション面に大きな変化は見受けられませんでした。
 

人材業

チャットを皆が活用し始めたことと、在宅勤務で離れているからこそ、よりコミュニケーションを意識することで活性化したと思う。

サービス業

一年間継続してきた手話教室が中止になり、みんなが手話を忘れてしまわないか心配

 
文字での情報共有は、コロナ前より増えたという意見が見られた一方で、第一言語が手話のろう者にとっては職場に対して自主的に行っていた「手話勉強会」が中止になり、手話を使う機会が減ってしまったことで共通言語がなくなるのではないかという不安の声も複数ありました。
 
 
 
全体を通して見てみれば、DEAF特有の変化という部分は実はあまり多くは見られなかったというのが今回の感想です。
 
 

「外してください」と言いづらい、さらに広がるマスク問題

 
まず前提として、音声が耳から入らない場合、最大のコミュニケーション要素は目(視覚情報)になります。
その上で、手話といった共通言語がない場合、口の形を見るということが「何を話しているか」を知る手段となっている職場が多いです。
マスクは、その口を覆って意図せず隠してしまうため、以下のような意見が多く寄せられました。
 

サービス業

周囲のほぼ全員がマスク着けているためコミュニケーション取りづらい。自分のためにマスク取ってもらうのは感染リスクがあるので気が引ける。

建設業

マスクする側も感染して欲しくないという思いがある。もし感染してしまったら、私の責任だな・・という不安が強い

 
無自覚的な感染もある新型コロナウイルス、マスクを外してしまうことで、自分も相手も感染リスクが高まるのではないか。しかし「いつもの」職場のコミュニケーションでは、口の形を見るというのは大きかった…。そんな方も多かったようです。

どうすれば、コミュニケーションが円滑に保たれ、感染リスクを下げる関わり合いができるのか…。

これが、このコロナ禍で最も(手話のできない)聴者とDEAFの壁になっていると感じました。

めちゃくちゃ当たり前のことを堂々と言いますが、
人に迷惑をかけるために、聞こえる状態で生きていたり、聞こえない・聞こえにくい状態で生きている、そんな人は誰一人いません。
みんなが自然の状態で、その壁は生まれているのです。

そんな中にあって我々人間ができることは、知ること・考えること、それによって優しくなれることではないでしょうか。
マスク問題に限らず聴者とDEAFの両者の歩み寄りの工夫が、このコロナ禍で自然と強く問われているのだと思います。
 
 

いったい何が、優しさか

私たちは、DEAFの人々が働く職場にこれまで多く現場を持ち、職場のパフォーマンス改善を行ってきました。
聴者とDEAFのコミュニケーションの壁は、相互理解を極限まで無の状態にしてしまうこともあります。
 

5年以上一緒に働いていても、全く聞こえていない人に対して「聞こえているんじゃないか?」と大声で話している聴者の上司がいます。
実は全く聞こえていない、何によって情報を得ているのか伝えられていない、大声の上司の口の形を見ているDEAFの部下がいます。
その職場に意図的に情報のバリアフリー化は行われることがなく、DEAFの活躍が制限されてしまうことが多々あります。

 
お互いのコミュニケーションで何が伝わるのか・伝わらないのか。
その上で、どうコミュニケーションをとるのか、一つ一つの意思疎通のあり方を相互理解と歩み寄りから捉え直していく必要があります。

方法はたくさんあります。その中には、マスクをしている状況でも意思疎通が成立する方法もあります。

私たちは、以下の2点をこの記事に表示することで、このコロナ禍での「優しさ」を多くの人が実行できることを願っています。

①相互理解を深める

<DEAF側が伝えるべきこと>
・現状のコミュニケーションで何が難しいか
・なぜ難しいのか?

<聴者側が伝えるべきこと>
・「コミュニケーションの壁」に対して対処する=方法を探す意思があること
・自分ができる声以外の伝える手段は何か?

<相互に知るべきこと>
・「何が」伝わっていないか

②歩み寄りの方法を明確にする

<コミュニケーション手段の種類からの選択>
・紙とペンによる筆談(図的に書けるとスピードアップ、たいていの場合敬語不要)
・ホワイトボード等での筆談(特に複数人の場合、見やすさ分かりやすさアップ)
・スマホ/PCでの文字入力、チャット(会話履歴が残る、遠隔有利)
・音声認識アプリ(声を文字に変換、代表格は「UDトーク」「JV2T」)
・空中に文字を書く(難易度高い、紙がない、単語を確実に伝える場合有効)
・ジェスチャー(肯定/否定などリアクション系は最も早い)
・手話(技量によるがスピード・正確性有利)
 
 
「誰一人取り残されない」ということが、徐々に社会の価値観となりつつあります。
上記のような取り組みを意識して取り組めることが、聴者とDEAF間の問題解決の面だけではなく
歩み寄りを色んな方向へ集団的に取り組めることの一つの形だと思います。
 
それに気づき、行動に移せる、民度や組織風土の存在が大切であると
これを機に、私たちも自戒の念を強めています。

 

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この記事を書いた人
尾中 友哉
尾中 友哉
株式会社およびNPO法人「Silent Voice」代表。1989年、滋賀県出身。聴覚障害者の両親を持つ耳の聞こえる子どもとして、手話を第一言語に育つ。大学卒業後、東京の大手広告代理店に勤務。「自分にしかできない仕事とは?」について考える。2014年から聴覚障害者の聞こえないからこそ身についた伝える力を活かした企業向け研修プログラム「DENSHIN」や、聴覚障害・難聴のある就学児向けの総合学習塾「デフアカデミー」を展開し、聴覚障害者の強みを生かす社会の実現に向けて活動している。2018年、青年版国民栄誉賞といわれる人間力大賞(主催:日本青年会議所)にてグランプリ・内閣総理大臣奨励賞および日本商工会議所会頭奨励賞を受賞。
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