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シルク・ドゥ・ソレイユ『キュリオス』唯一の日本人に聞く”違いを活かし合う文化”

Yuki Mihayashi
Yuki Mihayashi

今回、シルク・ドゥ・ソレイユの舞台『キュリオス』で、唯一日本人パフォーマーとして出演されている池田一葉さんをお招きして、ろう児・難聴児の総合学習塾「デフアカデミー」の子どもたち(小学校1年生〜高校生)へ講演会を開催しました。

なぜ、一葉さんをお招きしたのか?

それは、”サーカス”という、多くの方が関わることができるわけではない、ある意味、謎に包まれた世界に、デフアカデミーの子どもたちが今後生きていく上で、自分たちの人生を豊かに生きるヒントがあると思ったからです。

参加した子どもたちから積極的に質問があり、準備されたお話を聞くというよりは、子どもたちの疑問からやり取りを積み重ねていくような講演会になりました。その様子をこの記事ではレポートします。

『シルク・ドゥ・ソレイユ』とは

『シルク・ドゥ・ソレイユ』は、カナダ・モントリオールに本拠地をおく、世界最高峰と呼び名の高いエンターテインメント集団。
サーカス団ではありますが、動物を使用しないというポリシーの元、高い芸術を創り出し、30年以上人々に愛されつづけています。

池田 一葉(いけだ・かずは)さん

東京都出身。1981年生まれ。(聴者)
16歳でダンスを始め、早稲田大学人間科学部在学中の2003年に米国のロサンゼルスに渡る。その後プロダンサーとして活動し、「Billboard Music Awards」「T-Mobile commercial」「Nickelodeon」などに出演。日本では、宮本亜門氏演出のミュージカル『ウィズ』『Tee! Tee! Tee!』などに出演した。2017年に長い間の目標だったシルク・ドュ・ソレイユへの入団を果たし、2017年11月より『キュリオス』においてメインキャラクターの1人、クララ役を務める。

講演会の始まりは、みんなで “パントマイム”!

一枚のガラスがあって、手を這わせる・・・
今度は足。膝をくっつけて、開いて、横にスライド・・・
足と手を同時に動かす・・・
ドアをたたいて、開いた・・・!

言葉を使わずに、体と表情で動作を表現するパントマイム。

子どもたちと指導員も、汗をかきながら真似っこ。

教わったパントマイムは、なんと、一葉さん演じる『キュリオス』の”クララ”役の一部の振り付けということ!

一葉さん自身、『シルク・ドゥ・ソレイユ』に入団する前は、
パントマイムにチャレンジしたことがなかったそうです。

池田一葉さん

今も、私自身まだ練習中!みんなも真似して、コツを見つけたら、教えてくださいね

一葉さんが常に学ぼうという姿勢を持っていらっしゃることを、
子どもたちに垣間見せてくれた瞬間でした。

サーカスに常識はない。普通もなければ、障がいもない。

事前に『キュリオス』を観ていた子どもたち。
子どもたちから湧いてくる疑問に、一葉さんは丁寧に答えてくれました。
”セットは誰が動かしているの?”
”トレーニングはどのくらいしているの?”
”お金はどのくらいかかっているの?”

まさに”知られざる”サーカスの世界に子どもたちは目を輝かせて、興味津々!

耳の聞こえない人は働いているの?

子どもたち

子どもたちからの質問に、一葉さんはこう答えます。

「実際、知っている限りではわかりませんが、5000人くらいの人が働いていて、
働いている人の中には、車椅子の人や、体が小さい人もいます。
だから、耳が聞こえない人もいるんじゃないかと思います。
『シルク・ドゥ・ソレイユ』では、あえて障がいがある人を雇っているということを言いません。

なぜなら、身体的、精神的、思考とか、
いわゆる一般社会に苦しんでいる人、差別を受けていた人が集まって、
自分の強みを生かして発展したのが、サーカスだからです。

だからそもそもサーカスの世界に、常識、普通、障がいとかないんですよ。

ただの違いであって、特性です。

見た目にハンディキャップがないように見えても、社会で働くのが苦手な人もいるよね。それも、ただの違い。

身体的なことで言えば、40歳くらいなのですが、3〜4歳くらいの身長の短身の方もいますし、片足のブレイクダンサーもいます。
スタッフさんの中でも車椅子の方や字が読みづらい方もいると思います。

そういう人たちも、特別なわけじゃなく、自分の強みを生かして働いています。」

正解なんてない。共生の第一歩は、相手を攻撃しないこと

一葉さんも、大学を出て、会社で働くのが苦手だなと思ったことがあったそうです。
朝早起きするのが苦手で、みんなはできるのに、どうして私はいやないんだろう、と。

目に見える違いはないけど、精神的にサーカスの雰囲気が、自分に合っていたという。

「見た目だけじゃなくて、
宗教、LGBTの人、思想(何を信じているか)、いろんな人がいます。

イスラム教とヒンドゥ教の人もいれば、宗教を信じていない人もいます。
いろんな人がいる中で、みんなで一緒に生活しているんですよね。

何かが絶対に正しいとか、何かが一番力を持っているということがない。

あなたは間違っていて、私が正解なんてことがないんですよね。」

では、個性を持った仲間同志、うまく働くためにはどうすればいいのでしょうか。

一葉さんはこう言います。

具体的には、攻撃はしないこと。そして、自分の信じているものを押し付けないこと。

そういう雰囲気があるからこそ、自分のことを堂々と言えるんですよね。

そして、重要なのは、違いがある人たちは、周りにわかってもらう為に、自ら発信することです。

僕は、私は、こうだから、こうサポートしてほしいと言うんです。

違いを察してほしいということをしません。

発信することで、周りもサポートの仕方に、気付き、理解できますよね。

その上で、どうしたら、その違いを埋められるルールを作れるか?みんなで話し合うんです。
もしそのルールがおかしいな?と思ったら、また話し合う。

そうやって、みんなで納得しながらルールを作っていきます。

みんなも、世間一般には、耳が聞こえない、聞こえにくいという違いがあるかもしれないけど、
みんなは自分ははこういう人だから、こうして欲しいという発信をしましょう!

そこで、耳の聞こえない人はこうしてほしいんだ!と代表者にならなくてもいいんです。
それは一人ひとり違うから、『自分はこうだ』ということを伝えたらいいんだよ!

違いを伝えても、相手が受け入れてくれない時はどうすればいいですか?

子どもたち

子どもたちから出た素朴な疑問に一葉さんは、こう答えてくれました。

「受け入れてくれない相手を嫌いになったり、攻撃するんじゃなくって、
自分がこうして欲しいということを受け入れられない人なんだなということを受け入れるといいよ。

でも、どうしても分かって欲しい相手であれば、何回も伝えてもいいし、
もしくはそうでなかったら、距離を置いてもいい。

自分を受け入れる人を大切にしていってください。

でも、どうしてもわかって欲しい相手もいるかもしれない。
その時は、時間がかかるかもしれないけれど、努力する必要もあるかもしれないね。

もし不当な扱いを受けたな、と思うことがあったら、
それ、やめてくださいと言ったらいいと思います。

そうすると、意外とすんなりいくこともあるかもしれないね!」

サーカスの世界の常識は、まだまだ世間ではスタンダードじゃないかもしれない。
でも、一人ひとりの発信があってこそ、理解や輪が広がることもあることを丁寧に伝えてくれました。

自ら伝えることで、未来が変わる!

30歳で『シルク・ドゥ・ソレイユ』を目指された一葉さん。

ほとんどの人が夢を話すと少し笑って「無謀だよ」と言ったそうです。
それでも、諦めなかったと言います。

なぜなら、100人に5人くらいは、応援してくれたから。
200人、300人に伝えれば、応援者は増える・・・

だから、自分は何かをしたい何か思いがある時は、伝えることから始めてみよう!
そう心強く伝えてくれました。

身体的な違い、精神的や思想的な違い・・・たくさんの違いはあって当然で、特性。
お互いに発揮できる分野を持ち寄って支え合うというカルチャーは、
サーカス業界だけで留まることなく、社会全体として学ぶものがあると気づかされました。

今回も、とても素晴らしいメッセージを頂戴した講演会。

子どもたちが社会に出るとき、自分の強みを大いに活かし豊かな人生を送るヒントが得られるよう、今後もデフアカデミーでは、たくさんの人(人生)に触れる機会作りにも力を入れていきたいと計画しております。

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この記事を書いた人
Yuki Mihayashi
Yuki Mihayashi
みはやしゆき/世界をやさしくするコミュニケーション研究家 広告・コンサル業界を経て、保育士へキャリアチェンジ。日本では、International Kindergartenの施設長を2年経験。多国籍の先生たちと働く中で、理解し合い、新しいものを創り出すチームコミュニケーションの難しさと、それを超える面白さに気づく。 現在シンガポール在住で、多人種多文化のなかで子育てを経験中。シンガポールへ来て感じるのは、“個性やそれぞれのルーツ(違い)こそ美しい“ということ。日本のこどもたちに、まずは自分を大切に想う心を伝え続けていきたい! 情熱分野はヨガ。マインドフルネスを教育へ!と日々勉強中。

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