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聴覚障害者と聴者の職場問題 7000枚の付箋が教えてくれたこと

尾中 友哉
尾中 友哉

Silent Voiceの事業のひとつであるDEAF Bizでは
聴者とDEAF(聞こえない聞こえにくい人の呼称として使用)が
お互いの間にある問題を話し合うところから
職場のパフォーマンス向上のための問題解決・改善活動が始まります。

一枚の付箋(ふせん)に、一つの問題を書き、
それをホワイトボードに張り出し付箋どうしの関係性などから
貼り直しをして分類していきます。

Silent Voiceはこれまでその作業で書き出された付箋7000枚を
一枚、一行にして、全てエクセルに書き写してきました。

今回は以下の順で、付箋を整理して見えてきたことを書いてみます。

1.最も多く挙げられた問題

2.聴者とDEAFの間にある問題の構造

3.相手の問題に気がつきにくい理由

 

1.最も多く挙げられた問題

ランキング形式で発表しようと思うのですが、
付箋をどんな人たちが書いたかというと

・200名〜10万人を超える雇用している企業
⇒企業規模の違いは、職場における問題の質にあまり関係しませんでした
・聴者の意見は、DEAF社員の職場の上司にあたる人
・DEAFの意見は、全国の20〜30代が中心

いきなりですが、1位!!

他に多かったものを上位から並べると

<聴者(DEAFの上司)が挙げたもの>

・伝わっているか不安
・今後のキャリアをどう描くの?
・伝えるのに時間と手間がかかるので疎かになる

<DEAFが挙げたもの>

・筆談や音声認識アプリ、口話などが自分に合った形で使われない
・雑談がないので楽しくない
・情報が少なくてアウトプットがズレるのが心配

と、こんな感じです。

2.聴者とDEAFの間にある問題の構造

※注意点 聴者の研修参加者はDEAF社員の上司となることが多く「管理職目線」の言葉が多くなっています。

7000枚を超える付箋、そのほぼ全てが
たったひとつのキーワードの質と量の問題に繋がっています。
もう、DEAF当事者や深く関わっている聴者には説明不要でしょう。

コミュニケーションの壁」こそが、この問題全体のボトルネックと言えます。
ボトルネックの意味
何が言いたいかというと、このボトルネックという問題構造です。

例えば、「技術が低い」という問題も元をたどれば

「技術が低い」問題の根っこにあるもの

技術が低い

指導機会が少ない

人間関係が育たない

職場で雑談がない

コミュニケーション難しい

こういったことが分かっていくと「技術が低い」原因は、
その本人が何かを「覚えられない」とか「考えられない」というような
「能力の低さ」が問題の大元ではないということです。

このように、コミュニケーションというボトルネックが聴者とDEAFの間で
設備、教育、関係性、評価、能力、モチベーションの問題となる現象へと変わっていくのです。

なので、問題解決・改善活動にはこのコミュニケーションのボトルネックを
いかに聴者とDEAFで打破していくかに集中することになります。
ここで重要視すべきなのは、聴者とDEAFが協働で相互に行う必要があるということです。

反抗期の息子に話しかけても無視されるお母さんを想像してみてください。
コミュニケーションは共同作業というポイントを忘れてはなりません。

よって、
①聴者が「少数派に合わせる」ことをDEAFを巻き込まずにやる(障害者理解、合理的配慮etc)
②DEAFが「多数派に合わせる」ことを聴者を巻き込まずやる(聴こうとする、聴者の手間になるから諦めるetc)

①②のように進んでいって、どちらか一方が疲弊する状況を避ける必要があります。
 
 
 

3.相手の問題に気がつきにくい理由

多くの職場では、上記のような現象が放置され
「相手のせい」という不満に変わってしまいます。

この態度が余計に改善を遅らせてしまいますし
最終的に辛い思いをするのは少数派のDEAF側というのは
不平等というか、なんとも辛いものがあります。

ではなぜ、少数派は辛い部分があるのか?
説明していこうと思います。

少数派に起きがちな「マイノリティトラブル」

相手に対して想像力が働くということは、相手に優しくすることができます。

「聞こえないこと」には、想像力が働くか?
耳をふさいだとしても「聞こえない」体験は非常に難しいのです。

これは、少数派になり得る全ての特性に共通して言えることです。
男性ばかりの職場で働く「女性」
日本人ばかりの職場で働く「外国人」などなどです。

当事者の悩みごとは周囲に「分かってくれる人」が増えなければ解決が遅くなってしまう。
これは当然のことと言えます。

少数派を生まない=みんなの強みを活かす(多様性のある職場を作る)にあたって
最も大切なのは、少数派を決めつけて理解することではなく
組織内全員が他者への理解を持つことだと感じます。

そのために、お互いが「対話」の時間を作り
価値観の「違い」に対する合意形成にそれぞれが取り組み
協働している環境を作ることが
障害者雇用だけでなく、そもそも組織のパフォーマンス向上のために必要です。

7000枚の付箋は、それを見たときに相手が何に悩んでいるのか見える
そこから、想像力を広げていくことができる
新しい行動がそこから生まれれば、職場は変わっていくと考えています。

今は想像できないような新しい活躍が増えるように
また新しい付箋を増やしていきます!
 
 
 

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この記事を書いた人
尾中 友哉
尾中 友哉
株式会社およびNPO法人「Silent Voice」代表。1989年、滋賀県出身。聴覚障害者の両親を持つ耳の聞こえる子どもとして、手話を第一言語に育つ。大学卒業後、東京の大手広告代理店に勤務。「自分にしかできない仕事とは?」について考える。2014年から聴覚障害者の聞こえないからこそ身についた伝える力を活かした企業向け研修プログラム「DENSHIN」や、ろう・難聴児向けの総合学習塾「デフアカデミー」を展開し、聴覚障害者の強みを生かす社会の実現に向けて活動している。2018年、青年版国民栄誉賞といわれる人間力大賞(主催:日本青年会議所)にてグランプリ・内閣総理大臣奨励賞および日本商工会議所会頭奨励賞を受賞。
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